横浜地方裁判所 平成3年(わ)1640号 判決 1992年6月19日
(被告人)
1
名称 スターモア化粧品株式会社
本店所在地
神奈川県藤沢市鵠沼橘一丁目一五番一九号
代表者
林幹雄
2
氏名 林幹雄
年齢
昭和九年一月一日生
本籍
神奈川県藤沢市鵠沼橘一丁目一八七五番地の三
住居
同市鵠沼橘一丁目一五番一九号
職業
会社役員
3
氏名 大野皓
年齢
昭和一一年一月二〇日生
本籍
東京都港区元麻布一丁目三五番地
住居
埼玉県浦和市仲町二丁目一七番一一号
職業
会社役員
(検察官)
松本二三雄
(弁護人)
被告人1及び同2
丸山利明
同
五木田彬
被告人3
大治右
主文
一 被告人スターモア化粧品株式会社を罰金五五〇〇万円に、
被告人林幹雄を懲役一年六月に、
被告人大野皓を懲役一年に
各処する。
二 被告人林幹雄及び同大野皓に対し、この裁判確定の日から三年間それぞれその刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人スターモア化粧品株式会社(以下「被告人会社」という)は、神奈川県藤沢市鵠沼橘一丁目一五番一九号に本店を置き、化粧品販売等を目的とする株式会社であり、同林幹雄は、被告人会社の代表取締役として、その業務全般を統括していたものであり、同大野皓は、同林の依頼を受け、被告人会社の決算報告書及び法人税確定申告書の作成等に関与していたものであるが、被告人林及び同大野は、共謀の上、被告人会社の法人税を免れようと企て、被告人会社の業務に関し、登録料収入の除外、架空給料の計上等の方法により所得を秘匿し、
一 昭和六〇年一〇月一日から同六一年九月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額は九四七九万六七三八円で、これに対する法人税額は三九七〇万一八〇〇円であったにもかかわらず、同年一二月一日、神奈川県藤沢市朝日町一番地一一所在の所轄藤沢税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が二〇〇万五二二八円で、これに対する法人税額が二六万七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、被告人会社の同事業年度における正規の法人税額との差額三九四四万一一〇〇円の法人税を免れ、
二 昭和六一年一〇月一日から同六二年九月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額は一億八九三三万四九四一円で、これに対する法人税額は七八二九万九六〇〇円であったにもかかわらず、同年一一月三〇日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が三四八万五〇六円で、これに対する法人税額が七八万三三〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、被告人会社の同事業年度における正規の法人税額との差額七七五一万六三〇〇円の法人税を免れ、
三 昭和六二年一〇月一日から同六三年九月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額は二億六一三二万六〇四円で、これに対する法人税額は一億八四七万二〇〇〇円であったにもかかわらず、同年一一月三〇日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が四〇七九万一八九六円で、これに対する法人税額が一五八四万九八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、被告人会社の同事業年度における正規の法人税額との差額九二六二万二二〇〇円の法人税を免れた。
(証拠)
全部の事実について
1 被告人林の
(1) 公判供述
(2) 検察官調書(九通、ただし、検察官請求番号乙3、5ないし8の被告人会社及び被告人林の同意部分については、被告人会社及び被告人林の関係でのみ採証)
2 被告人大野の
(1) 公判供述
(2) 検察官調書(八通)
3 山本圭子、伊藤邦子及び石丸満代の各検察官調書
4 売上高調査書、登録料収入調査書、駐車場収入調査書、期首商品棚卸高調査書、当期仕入高調査書、期末商品棚卸高調査書、給料調査書、通信費調査書、旅費交通費調査書、報酬手当調査書、交際接待費調査書、事務用品費調査書、販売経費調査書、賃借料調査書、水道光熱費調査書、運搬費調査書、修繕費調査書、福利厚生費調査書、諸税公課調査書、諸会費調査書、広告宣伝費調査書、消耗品費調査書、リース代調査書、新聞図書費調査書、損害保険料調査書、雑費調査書、事務所手当調査書、交際費限度超過額調査書、備品費調査書、役員賞与調査書、損金不算入役員賞与調査書、退職金調査書、貸倒金調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、為替差益調査書、為替差損調査書、支払利息調査書、支払手数料調査書、事業税認定損調査書
5 報告書(前記番号甲7)
6 登記簿謄本
一の事実について
7 脱税額計算書(前記番号甲8)
8 法人税確定申告書一綴(平成三年押第四五五号符号3)
二の事実について
9 脱税額計算書(前記番号甲9)
10 法人税確定申告書一綴(平成三年押第四五五号符号2)
三の事実について
11 脱税額計算書(前記番号甲10)
12 法人税確定申告書一綴(平成三年押第四五五号符号1)
(法令の適用)
罰条
被告人会社について (各事業年度毎に)法人税法一六四条一項、一五九条一項(更に情状により一五九条二項)
被告人林及び同大野について (各事業年度毎に)刑法六〇条、法人税法一五九条一項
刑種の選択
被告人林及び同大野について いずれも懲役刑選択
併合罪の処理
被告人会社について 刑法四五条前段、四八条二項
被告人林及び同大野について 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い二の罪の刑に加重)
主刑
被告人会社について 罰金五五〇〇万円
被告人林について 懲役一年六月
被告人大野について 懲役一年
刑の執行猶予
被告人林及び同大野について 刑法二五条一項(いずれも三年間)
(量刑について)
本件は、被告人らにおいて、三事業年度にわたって合計約二億円余の法人税を逋脱したというものであるが、右逋脱額に加え、その逋脱率も九二パーセントを超えるものである上、動機・態様等を併せ考慮すると、本件は悪質な脱税事犯というべきである。そして、本件においては、被告人会社の代表取締役である被告人林が本件犯行を企てたものであって、もとよりその刑事責任は重いといわざるをえないが、被告人大野も、被告人林に依頼されたとはいえ、報酬を得て税理士時代に蓄積した税務知識を悪用して本件犯行に及んだものであって、税理士法違反の罰金前科があることなどを併せて考えると、被告人林に劣らず、その刑事責任は重いといわなければならない。
しかしながら、被告人会社は、本件の本税、延滞税、重加算税等をすべて納付するとともに、新たな税理士を迎えて、その経理体制を改善しようとしていること、被告人林は本件公訴事実をすべて認め、身体障害者療護施設に二〇〇万円の贖罪寄付をするなど、反省の態度が認められ、また前科もないこと、被告人大野も当公判廷において反省の態度を示し、前記罰金前科を除いて他に前科もないことなど、被告人らそれぞれに有利な事情も認められるので、当裁判所は、これら一切の事情を斟酌して、主文の量刑をした上、被告人林及び被告人大野に対しては、その情状に鑑み、その刑の執行を猶予することにした。
(裁判官 河合椿伊)